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Q.57 建物増築

質問
父所有の平家建の建物にその子が自己資金で2階を増築(区分建物として独立性はない)しました。この場合、どのような登記をすることになるのでしょうか。

回答

 この事例では増築部分の所有権の帰属がどのようになるのかについて問題となります。不動産の附合について民法第242条は、「不動産ノ所有者ハ其不動産ノ従トシテ之ニ附合シタル物ノ所有権ヲ取得ス但権原ニ因リテ其物ヲ附属セシメタル他人ノ権利ヲ妨ケス」と規定しています。すなわち、不動産の従としてこれに附合した物がその不動産の構成部分となった場合、又は附合物が社会通念上その不動産の一部と認められる状態となったときは、同条の規定により不動産の所有者は附合物の所有権を取得することになります。また権原によって、地上権者、永小作権者等が不動産に自己の物を附属させた場合には、附合が生じないが、借家人が借家を増築した場合は、その増築部分について原則として建物に附合すると解されています。
建物の増築による附合の基準について判例は、増改築部分が独立の建物と同一の経済上の効力を全うし得る場合以外は附合を生ずるとし、その判断に当たっては、社会通念上の経済的利用の独立性の有無を基準とすべきであるとしています。(最高裁判第三小法廷昭和35・10・4判決・判時244号48頁)。
最近では、増築部分が区分所有権の対象となり得る場合(建物区分所有法)には独立の所有権が成立するが、それ以外の場合には附合を生ずるとするのが一般的な考え方です。 以上のことから、この事例においては、民法第242条の規定により父の所有する建物に附合することになり、父から同建物の表示の変更の登記(構造及び床面積の変更)をすることになります。
この登記を申請する場合には、登記申請書に所有権を証する書面として、建築確認通知書、同検査済証、工事完了・引渡証明書等を添付することになりますが、これらの書面の名義はいずれも資金を出した子の名義となっていることから、登記の実務においては通常これらの書面のほかに増築部分が父所有のものである旨を記載した子の上申書を添付する取扱いとされています。
なお、この事例においては、建物の表示の変更登記をした後、父と子の合意により所有権の一部を移転し、これを共有の建物とすることは可能です。
又、あらかじめ増築完了後の建物全体における既存部分と増築部分の価額按分による父と子の持分を決定し、既登記建物について父から子へ持分の移転登記を経ておき、増築完了後に建物表示変更登記を行うことも可能です。
この登記を申請する場合は、通常の所有権証明書のほかに持分の割合を記載した上申書等の添付が必要とされています。
 詳しくは最寄りの土地家屋調査士にお問い合わせ下さい。
 なお、本事例のような件については、税務上贈与税等問題が発生することも考えられますので、あらかじめ税務署または税理士に相談のうえ、登記をすすめるとよいでしょう。