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Q.37 共有1

質問
下記の登記は、共有者の1人からでも申請することができるか。
 ・土地の表示の登記
 ・土地の分筆の登記
 ・土地の地積の更正の登記(共有者全員の境界承諾あり)
 ・建物の増築の登記
 ・建物の滅失の登記

回答

土地の分筆の登記以外は、共有者の1人からでも申請することができる。


1 不動産の表示に関する登記は、権利の客体である不動産の物理的な状況を登記簿に記載し、これを公示することによって、取引の安全を図るとともに、国又は地方公共団体の行政施策の基礎資料を提供するものであるから、設問に掲げられた登記のうち、土地の表示の登記、土地の地積の更正の登記、建物の増築の登記及び建物の滅失の登記については、所有者、表題部に記載した所有者又は所有権の登記名義人は、原則としてその登記を申請する義務が課せられている(法80条1項、81条ノ5、93条ノ5第1項、93条ノ11第1項)。また、登記官が登記義務者に対し催告(準則92条)しても申請されない場合は、登記官は職権でも登記することができる(法25条ノ2)ものとされている。
設問のうち分筆登記以外の登記は、報告的登記といわれており、この登記の申請は、表示登記制度の特質からも、また、申請者側の便宜の点からみても、申請する土地又は建物が共有である場合には、民法第252条ただし書による保存行為として共有者の中の1人からでも単独で申請することができるものと解される。先例は、被相続人の死亡前に滅失した所有権のある建物について、当該建物の滅失登記の申請は、相続人のうち1人から申請することができるとしている(昭和43・12・23民三第1075号民事局第三課長回答)。


2 一方、表示に関する登記の中には、原則として所有者の自由な意思に基づく登記で、不動産の物理的な状況の変化に伴う登記ではなく、登記官は職権をもって登記することができないものもある。これらの登記は、登記をすることによりその変更の効果が生ずるという意味で創設的登記と称されている。例えば、土地の分筆又は合筆の登記はこれに当たり、この創設的登記の申請は、その効果からして、共有者全員の意思に基づいてされることが必要であり、共有者全員の申請によってしなければならないものと解されている。先例は、共有者の一部の者との間に成立した買収協議に基づいてする共有土地の代位による分筆登記は認められないとしている(昭和37・3・13民三第214号民事局第三課長回答)。これは、分筆という行為が民法第252条ただし書の保存行為に該当しないので、共有者全員から申請すべきであるとされているからである。(注1)


3 例えば、共有者A、B、C3人の共有の土地の一部を買い受けたDが、その所有権移転の登記をするには、その前提として分筆の登記をしなければならないが、B、Cが分筆登記の申請に応じないからといって、Aが単独で分筆の登記を申請をすることはできないということになる。この場合には、買受人であるDは、共有者A、B、Cから共有土地の一部を買い受けた者として、所有権移転登記請求権に基づきこれらの共有者に代位して分筆の登記を申請することができる。(注2)


なお、登記の実務においては、共有土地の一部の地目が変更したことによる分筆及び地目変更の登記申請は、共有者の1人からでも申請することができると解されている。(注3)

(注1)登記先例解説集6巻4号46頁
(注2)登記研究211号53頁
(注3)登記研究396号105頁