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判決速報

広報部
大阪高等裁判所第8民事部平成16年5月14日判決
(公嘱協会に関係する部分を抜粋)

 官公署等が、公共の利益となる大規模な事業を行う場合には、これに伴って、大量の登記測量業務等が一時期に集中して生じることがある。官公署等が、上記の大量の登記測量業務等を自ら行うことは不可能であり、専門資格者である司法書士又は土地家屋調査士を関与させる必要がある。しかし、一人の司法書士や土地家屋調査士が上記の大量の登記測量業務等を処理することはできないから、多数の司法書士や土地家屋調査士が組織的に処理に当たることによって、適正かつ迅速な登記測量業務等の実施が可能になる。
 このような観点から、司法書士法は、司法書士は、その専門的能力を結合して、官公署等による不動産の権利に関する登記の嘱託又は申請の適正かつ迅速な実施に寄与することを目的として、公共嘱託登記司法書士協会と称する社団法人を設立することができ(17条の6第1項)、公共嘱託登記司法書士協会は、上記目的を達成するため、官公署等の嘱託を受けて、不動産の権利に関する登記につき登記手続等の事務を行う(17条の7第1項)ものとされている。また、土地家屋調査士法も、土地家屋調査士は、同様に、公共嘱託登記土地家屋調査士協会と称する社団法人を設立することができることなどを定めている(17条の6第1項等。以下、公共嘱託登記司法書士協会及び公共嘱託登記土地家屋調査士協会を、併せて、「公嘱2協会」という。)。
 公嘱2協会は、いずれも、司法書士又は土地家屋調査士が加入しようとするときは、正当な理由がなければ、その加入を拒むことができず(司法書士法17条の6第4項、土地家屋調査士法17条の6第4項)、法務大臣の監督に服し(民法67条)、法務局又は地方法務局の長は、その管轄区域内に設立された公嘱2協会の業務の適正を確保するため必要があると認めるときは、公嘱2協会の業務状況を調査する権限を有する(平成15年法務省令第27号による改正前の司法書士法施行規則39条、平成15年法務省令第59号による改正前の土地家屋調査士法施行規則39条)ことが定められている。
本件2団体は、いずれも、これらの規定に基づき設立された社団法人である。
 公嘱2協会は、官公署等から公共嘱託登記事件を受託した場合は、その事件の性質、規模、不動産の所在地等を考慮して、その事件の処理に必要な事務を取り扱う司法書士又は土地家屋調査士を選定し、その者にその事務を委託する。

 公嘱2協会の設立の趣旨は、大量の登記測量業務等を適正かつ迅速に実施することにあることからすれば、官公署等が、公嘱2協会に対し、大量の登記測量業務等を一括して委託することは、上記趣旨に適った合理的な方法であるというべきであるから、普通地方公共団体が、公嘱2協会に対し、登記測量業務等を委託するに当たって、一定の範囲及び期間内に行われる登記測量業務等を一括して委託する契約を締結することは、司法書士法及び土地家屋調査士法の趣旨に照らして、是認することができると解される。これに加えて京都府以外にも多数の普通地方公共団体が、登記測量業務等を公嘱2協会に一括委託していることが認められる。
 したがつて、契約担当者が、本件2団体に対して登記測量業務等を委託することを前提にして、一括委託方式を採用した判断に合理性がないということはできず、一括委託方式を採用したことは裁量権の逸脱ないし濫用に当たらない。
 確かに、一括委託方式を採用した場合は、本件2団体と本件2団体に加入していない司法書士及び土地家屋調査士との間、さらには本件2団体に加入している司法書士及び土地家屋調査士相互間において競争原理は働かないことになる。しかし、このことは、司法書士法及び土地家屋調査士法が当然に予定したことであるから、このことをもって、本件2団体に対する一括委託がいわば丸投げであるとか、官製の談合であって違法であるということは相当ではない。
 また、京都地方法務局の管轄区域内に事務所を有する司法書士又は土地家屋調査士のうち、司法書士協会に加入している司法書士の割合は約4割であり、調査士協会に加入している土地家屋調査士の割合は約6割であるが、前記のとおり、本件2団体は、いずれも、正当な理由がなければ司法書士又は土地家屋調査士の加入を拒むことはできないのであるから、本件2団体に対し登記測量業務等を一括委託することは、未加入者を公共嘱託登記測量業務等から排除することにはつながらず、これをもって本件2団体に対する一括委託を違法とすることもできない。
 さらに、本件2団体が個別の業務を担当する司法書士や土地家屋調査士を選定するため、本件2団体内において、上記選定を担当する者が不公平な選定を行うおそれがあることは否定できないが、このことは、前記のとおり法務大臣による監督等の手段により是正すべき問題であって、これをもつて本件2団体に対する一括委託が違法になるというものではない。
 また、以上によれば、府が、本件2団体に対し、登記測量業務等の一括委託することは、「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」(法施行令167条の2第1項2号)に該当するといえるから、府が本件2団体との間で随意契約の方法により本件各委託契約をしたことについても、違法であるといえない。