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編集後記

広報部長 伊藤博雄

 宮城公嘱NEWSもVOL,9の発刊です。仙台法務局民事行政部長が交代されたのでご挨拶をいただき、首長リレーは白石市長から丁重なるご挨拶をいただきました。  表紙の写真は、日下友之仙南支所長の提供による国の天然記念物「材木岩」です。柱状節理による材木を立てかけて並べたような高さ65メートルを超える巨大な岸壁は「圧巻」とのこと。

 今や地球上のどこにも影響力が及ばない場所はないといっていいくらいアメリカは立派になった。USA大統領の演説の中には「国益」という言葉が頻繁に出てくる。USAはその「国益」というフラッグをかかげ全世界を相手取り様々なゴリ押し的行動をとってきた感がある。自由の国アメリカの正体とは?

 今、世界の国々に「市場原理」と「自由競争」を説くアメリカだが、歴史を振り返ると、「保護主義」の国で、あまり道徳的ではない人たちが、先住民や諸外国に対してほしいままに侵略や略奪を繰り返してきている。
 豊かになって、何でも世界一であることを謳歌し、自由の総本山を自負してきたけれど、国家の品格を決める「道徳」や「倫理」はまだ身に付いていないようだ。
 ソビエトの崩壊で冷戦構造が消えて一国優位になった現在、気に入らない国々への経済制裁や軍事行動、あるいはグローバル・スタンダードという名の「自分たちのやり方」の押しつけなど、傍若無人の振る舞いが目立つ。およそリーダーらしからぬ独善的な素顔を露にしはじめている。
 「アメリカにはいつも敵が必要である」としばしば言われる。敵がいないと暴走するのは、自律的な道義がまだない証拠で、自分をコントロールする倫理を持ち合わせていないためアメリカは暴走する。
 しかし、不思議だが、牛の大群の暴走と同じでやがて止まる。「力がすべてではない」と気づくと、倫理が生まれる。集まった人間間の道理や根本原理を「倫理」という。人間が集団になったら、ルールやマナーやエチケットを守ったほうがお互いに暮らしやすくなる。これを書き出したものを「道徳」と言い、それを強制すると「法律」になる。語義から述べると、文章化されたルールが「法」で、それを守らせるために罰則や刑務所をつくると「律」になる。律には強制力が伴っている。
 「俺が一番強い」「俺の言うとおりにしろ」と言うとき、そこに「倫理」はない。アメリカは地球上で他国にまったく頼らず暮らせるのかといえば、それは不可能だ。「みんなから総スカンをくらったらどうするのか」ということに、アメリカは今のところ気づいていないように見える。
 正義を持ち出して二者択一を迫り、中立を認めないのは、共同体精神の否定である。お互い持ちつ持たれつなのだから、話し合いで折り合いをつけて暮らしていくのが倫理で、突然「正義」だ「十字軍だ」と言うのは不穏当である。
 その点、聖徳太子以来1400年の歴史がある日本は和の精神が身についている。ヨーロッパも身についており、「ひとつの欧州」として文字通りEU(欧州連合)を形作っている。
 ベトナム戦争で負けることを知り、大人になったはずだったが、ソ連が崩壊すると再び湾岸戦争、アフガン戦争、そしてイラク戦争と立て続けに戦争を起こした。これ以上戦争を仕掛けるとしたら、あとは中国しかないが、中国に地上軍はとうてい送れない。毛沢東の共産党史には「文化大革命で2500万人を殺した」と記録されているように、たとえ原爆を1000発落として、一億人が死んでも中国は滅びない。原爆が足りなくなる。国内外で批判を浴びることは目に見えてくる。中国侵攻はおよそ現実的ではない。中国を支配するにはまったく別の方法が必要である。さもなければアメリカ建国以来の侵攻の歴史も、このあたりが打ち止めということになる。
 アメリカは、建国以来200年で200回の戦争をしている軍事国家である。上院が宣戦布告したのはわずか四回で、残りはすべて「大統領命令による出動」である。すなわち五軍の長である大統領は、自分の判断で戦争を始められる。
 2002年6月下旬、ブッシュ大統領は、イラクのフセイン大統領を叩くと、かなり強い言葉で何度も喋ったが、その時、注目すべきことが起きている。「株」が下がり、「ドル」も下がり、「大統領支持率」も下がった。三つがセットで下がったのは、前代未聞の出来事だった。
 これまでの常識は「有事のドル高」である。これまでの常識がセットで覆ったことに注目すると、アメリカと世界の常識はまだ健在だったことがわかる。特にカネによる投票はイラク戦争不支持だった。なぜブッシュは力を込めてフセインを攻撃すると言い出したのか、それはその背景が実に不道徳なことだったからである。
 エンロンやワールドコムの不正会計で、アメリカ企業や会計の信用が失墜した。とりわけ、石油や天然ガスのパイプラインを運営する企業として発足したエンロン社の事件は衝撃が大きかった。
 同社は、政府の総合エネルギー政策にうまく乗り、というよりそういう新政策を政府に売りこんで、総合エネルギー政策は大統領が支持している、国策だからと株価を吊り上げるだけ吊り上げたところで、巨額の簿外債務が発覚し、債務総額が400億ドルを超える史上最大の倒産となった。国家を利用して、莫大な利益を上げようとするとは「市場主義」や「自由主義」が聞いてあきれる話だが、このエンロン社から政治献金を受け取っていたナンバーワンとナンバーツーがブッシュ大統領とチェイニー副大統領だったという話が出て議会が動き始めた。議会が問題にし始めた時、ブッシュはフセインに対して大変な剣幕でおこってみせ、熱弁を振るったので、議会の追及をかわすために、ブッシュは戦争を始めるのではないかと多くのアメリカ国民は考えた。自分の不始末を誤魔化すために戦争を始めるとはどういうことかと、人々は考えた。ドル、株価、支持率が下がった理由については以下のような説明がされる。軍事予算の増加で財政赤字がさらに増え、軍事産業はよいが一般には減税が中止になったり、国債が増発されて金利が上がったりしてアメリカの経済が悪くなる。だから株は安くなる。大統領支持率も下がるのだと。だが、そんなことよりも道義にもとる人達が力を振るうことを、アメリカ国民も、世界のマーケットも嫌悪しているのである。
 「アメリカと商売をすると、いつ騙されるか不安だから商売しない」「アメリカには金を貸さない」という国が出てきた。予想したとおり、お金が逃げていくアメリカになった。困ったアメリカ企業は、ヨーロッパに持っていた財産を売却して、ユーロを手に入れ、このユーロをドルに換えてアメリカ本社の赤字を埋めたり、あるいは設備投資に使う。ユーロ建ての資産を売ってドルに替える際は、ドル安が得になる。だからヨーロッパに資産を持っている会社は「しばしドル安にしてくれ。それが一段落したら、また元に戻していいから」とブッシュに頼む。ブッシュは二つ返事で、彼らの要望を受け入れたようだ。一時期、ブッシュは「ずっとドル高政策できたが、あまりマーケットに干渉するのはよくない。マーケットが決めるのがいいだろう」と言ったことがある。だが、一ヶ月くらいすると、まったく言わなくなってしまった。あの一ヶ月のドル安の間に、ヨーロッパにあった財産を売っていたのだと思う。そのくらい金詰りをしていると読み取れる。
 ヨーロッパ人が「アメリカ企業の株はとても買えない」という態度になるのは、自然のなりゆきだ。
 すなわち、国際社会にも倫理があり道徳もある。倫理道徳を守らないと、まず国際金融が悪くなり、やがてはGDPの低下につながる。経済的繁栄の基礎には、その国の倫理道徳がある。
 日本は、円高を食い止めるという理由で、アメリカ国債を買い続けている。その額は、7000億ドルという途方もない額に達し、世界一アメリカにお金を貸している国になった。
 アメリカは貸し主の日本に揺さぶりをかけた。不良債権問題を抱え、脛に傷を持つ身だった日本に、国際会計基準を採用しろと迫ったのもその一つである。「心配だから会計の中身を見せろ」と言ったが、日本こそアメリカに「心配だから財政状況を公開しろ」というべき立場である。
 日本の商法では購入時の簿価で評価することになっていたが、「それでは含み益や含み損があってよくないから、国際会計基準に合わせて時価評価にしなければならない。世界中が時価評価だ」ということになった。他の国では取得価格か、時価のどちらを選ぶかはそれぞれの企業が決めればいいだけの話だったのである。結局のところ、アメリカ式の会計基準をグローバル・スタンダードと銘打って日本に押し付けたのは世界最大の借金王国・アメリカが、貸し主の日本を丸裸にする策略の一部だったような気がする。
 「メンバー固定制」だと信用が発生する。先祖代々この地で暮らしてきて、この先孫子の代までも住んでいるのだから、他のメンバーを裏切るわけにはいかない。隣村、そのまた隣村へと人間関係は網の目のようにつながりながら、日本人は2000年以上も生活してきた。そういう共同体のメンバー意識があるからこそ、見ず知らずであっても他人の迷惑になることには自らブレーキがかかる。その倫理や道徳が会社の取引にもつながっていることに、アメリカは驚嘆している。
 われわれは、相互信頼社会に暮らしている幸せを知り、これを続ける努力をしなければいけない。
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(参考文献=道徳という土なくして経済の花は咲かず 日下公人 祥伝社)
平成16年6月