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業務だより 仙台市太白区ひより台地区地図混乱の実態調査

業務部長  柴田健治

プロローグ
 「私の土地は何処ですか?」 この言葉は仙台法務局で公図証明書の交付を受けている方が法務局の窓口の職員に尋ねている様子です。
 決して珍しいことでもなく日常行なわれている光景ですが、一般人がみて難解な証明書を交付する法務局もそうですが、文句も言わず、お金を払って理解できない証明書をいただいて帰る方も帰る方です。
 市販の住宅地図の方が余程、わかりやすく正確です。
 お役所、特に法務局といったら難しい文書がいっぱいで、質問するのも恐いというイメージが定着しているのでしょうが、こと公図の問題に関しては行政の怠慢のなにものでもありません。
明治時代の図面を踏襲して現在に至っているなどと、伊能忠敬が聞いたら入れ歯を飛ばして驚くことと思います。
 ところが近年、その法務局もやっとその重い腰を動かし始めました。
4、5年前から県内の地図混乱状況を調べ始め平成12年には仙台市若林区上飯田地区0.44平方キロメートルの17条地図作製に着手しましたし、今年度は仙台市太白区ひより台地区0.33平方キロメートルの実態調査を行なうことを決め当協会にその作業を命じられました。

地図混乱の発生メカニズム
 地図混乱とは法務局の公図と現地が合わないことをいいますが、程度は軽いものから、かなりの重症なものまで千差万別です。一般に地図混乱というのは合わないばかりでなく、その記載が明らかに間違っている重症なものを指します。
 地番が隣同志で逆についていたり、消えていたり、まったく違った場所にあったり、境界が真直ぐなのに曲がっていたり・・・と様々なミステイクが一団となって存することを指します。
 それでは、地図混乱はどうしておこるのでしょうか。
 先日、ちょっとしたきっかけで、昭和40年代始めに活躍(?)した問題のデベロッパーの中枢とみられる人物と話す機会がありました。
 彼等が造成販売していた当時は、現行の都市計画法などの宅地造成に関する規制はなく、やりたい放題の状態でした。
 ひとやまいくらで買わなきゃ、儲からない。なぜなら登記簿と実測では相当の増歩があって、その増歩分が儲けだったと述懐する。
 販売は、その山の入口に飯場を建てて壁に今の区画図のような図面を貼って青田売りをする。
 お客は仙台駅や長町駅に専用ハイヤーを常置させ、無料で送迎させる。すべて現金取引き、今のように住宅ローンなんて面倒くさい客は断る、日に四、五十人、休日になると百人以上来て飯場には入りきれない時も珍しくなく、いまの不動産不況からは考えられないほど活況を呈していた、と豪語する。
 自慢話は更に続く・・お客は山を見て将来造成される姿を思い浮かべて契約していく。
 壁に貼っている区画図に契約者の名前を入れ、やがて区画がすべて埋まりそうになると、まだ契約していない次の山の図面をその場で書いて墨入れしていく・・・まるで無法地帯である。

地域の公図

 それでは登記手続きはどうやっていたか、これが驚きです。
 「ひとやま」全体の大きさは、購入する時に所有者から境を案内されるときに歩測で計測し、その結果を区画図にし、更にその図面で土地家屋調査士へ分筆の指示を出す。
 法務局の公図はご存知の通り現地と合わず、縦・横比率を考え地形図に入れる。
 ある日、アクシデントが起る。造成していったら思った以上に広く、2街区ほど新規で入ることが判明、突然区画図に2街区が追加されることとなる。
 当初予定していた地形図の墨入れも、再度縦・横比率を変えないと難しくなる。
 またまた難問、今度はこのペースで区画していくと最終的には引き算できないことが判明、至急何かと合筆を考える。隣の造成途中の「ひとやま」と合筆・・・ここまでくると公図は悲惨な状況、担当の土地家屋調査士もさじを投げる。
 互換性のない新たな土地家屋調査士や測量士が頼まれ更に公図は切り刻まれる。
 話を聞くと当時、このような状況が仙台、いや全国規模で行なわれ続け地図混乱が蔓延していったと推定されます。

懺悔の実態調査
 和紙で作られた公図が不正確だから・・・と責めていた自分が恥ずかしく、結局は人間の欲によって為された地図混乱。
 安過ぎと評判の実態調査費でありましたが、我々土地家屋調査士同胞の懺悔の意味もあって実態調査に燃えたひと夏でした。
 8月11日、3回に分けての住民説明会を同町内会集会場で実施。
 法務局から主席登記官が挨拶、続いて総括登記官が状況説明、協会から私たちが調査方法を説明、エアコンのない暑いなか部屋がいっぱいになるほど住民の関心が高く、責任の重さを痛感いたしました。
 実態調査は9月初旬、2パーティーに分かれて無作為に抽出した85件と将来の17条地図作製のための基準点選点作業を実施。  残暑の折り、住民の皆さんから励ましの声掛けのなかで無事終了できました。
 あとは、ほとんどがデスクワークです。
 要約書、位置図、公図、測量図、道路台帳図・・等々ことごとくスキャンしデジタル化ののち文章についてはOCR変換、図面類は接合、着色とそれにデジカメで撮影した境界杭を取り混ぜて仕上げはデーターベースにて集積管理、選点図も2500分の1の都市計画図にフルカラーで表示、納品はぺーパーの他にCDに保存して納めました。
少しは懺悔の証として役立ったのでしょうか、法務局からは今後の実態調査の統一様式にと冷やかされましたが、無事終了いたしました。

納品した成果品

フィナーレ
 今回の実態調査をもとに今後この地区が法17条地図の作製事業が行なわれるかどうか注目されるところですが、長年の住民の不自由を考えれば是非とも実施されることを祈願する次第です。
 とにかく、人為的にまねいた地図混乱この発生に深くかかわった「土地家屋調査士」、今度はこの解消に真剣に取り組む時期がきているのかもしれません。