調査士と独立行政法人
元日本土地家屋調査士会連合会副会長 青 野 正 昭
この度、財務省印刷局が所有する多賀城市伝上山に所在する土地境界確定並びに地籍更正登記業務の依頼がありました。
本件については、東京協会が窓口になり、全国17箇所(東京、神奈川、静岡、大阪、愛知、広島、福岡、宮城、北海道)に亘って境界確定業務並びに地積更正登記を実施するとのことであります。実行にあたっては、大変なご苦労を東京協会並びに宮城協会の担当役員の方々におかけしたものと感謝いたしております。
聞き及びますと、今回の業務は、2003年度の前半に、財務省印刷局の独立行政法人化が予定されているとのことなので、移行準備作業なのかと感じております。
1、発注業務内容について
平成13年10月16日 東京協会より財務省印刷局総務部会計課との打合せ報告があり、契約の内容は概略次のとおりです。
1 積 算 公共嘱託登記業務報酬額によること
2 仕 様 作業期間 契約締結日より平成14年2月28日(納期)
| 作業内容 | 資料調査、現地調査、筆界確認、立会い作業、測量作業、 登記申請書作成 |
| 図面作成基準 | 縮尺は500分の1、A1またはA2サイズ 境界の種類、目的地・隣接地の地番、所有者名の明示 原図はポリエステルフィルム500番、墨入れ仕上げ 記入単位メートル・少数点以下3位(4位切り捨て) 基準点・基準点座標値の記入 |
| 求積図 | サイズはA1, 面積計算は三斜法または座標法、 名盤(図名、縮尺、作成年月日、作成者名)、楷書文字 |
| 納入物 | 境界確定図 原図1部、複写図5部 求積図及びトラバース計算書 境界確定協議書(隣接地所有者分も作成、確定図面・案内図・公図を添付、境界点及び現況写真) データはDRA-CAD *1 又はDRA- CAD*1互換用ソフトにて作成し MO*2に記録して提出 |
| その他 | 契約締結日の翌日から起算して1週間以内に作業に着手すること |
12月3日 財務省印刷局の業務を、東京協会において受託契約し、復代理人として業務を処理することになりました。
12月6日 担当社員名簿を東京協会に報告し、平成14年1月11日財務省印刷局より担当社員が承認されたとの報告がなされ、委任状が発行されることになりました。
作業に着手することになったので、現地踏査と多賀城市、仙台法務局塩釜支局において資料調査を開始し、その結果境界立会人は、国土交通省・多賀城市、財務省印刷局及び隣接個人土地所有者であることが判明した。
現地における基準点については、道路台帳作成時の基準点を発見したものの、結合精度が悪く使用できないとの結論に達し、任意座標によることを東京協会に報告、了解手続をお願いしました。
また、懸念した隣接個人地主は、全員居住しており、かつ境界に関しトラブルが発生していないことを確認し、現地立会い日程調整に入りました。
500番フィルムについては、私に持ち合わせが無く測量用品販売店に尋ねたところ1ないし2枚での販売はできないとの回答。受注を受けていた他の社員も私同様困っているとの情報が入ってきました。宮城協会を通して社員で500番フィルムを所持している方のご厚意により用意することができました。
立会い当日は順調に境界の各点を確認することができ、境界点のない箇所に境界標識を埋設すること、測量図完成後に署名捺印を頂くこと、印鑑証明書の必要なことを説明し、測量する予定日時を伝え散会しました。
測量と境界標の新設も終わり、仕様に従った図面が仕上がり、関係者に署名捺印前に説明と縦覧に供し、事前承認を取り付けました。2月も半ば、納期も気になる時期でした。
隣接個人地主の署名捺印が整い、地積更正登記申請をし、無事納期までに登記を完了することができました。
2.独立行政法人とは
21世紀における国家機能のあり方、中央省庁再編、官邸機能の強化等を検討課題とする行政改革会議を設置し、平成8年11月28日第1回会議が開催され、平成9年9月3日中間答申、平成9年12月3日最終答申がなされた。
その中央省庁再編の議論の中で、国家行政の減量と縦割り行政の排除のテーマと企画立案業務と実施業務を区別し、後者をアウトソ-シング(外庁化)することにより実現することにした。
平成13年1月6日より中央省庁機構改革の実行がなされ、アウトソーシングなされた実行部門は、独立行政法人として設立することになった。
独立行政法人設立にあたっての法整備として、関係諸法令の整備と平成11年法律第103号独立行政法人通則法(以下通則法という)が平成11年7月16日に、その整備令が平成12年6月7日に公布され、いずれも平成13年1月6日施行されている。
通則法によると、独立行政法人は、独立行政法人と特定独立行政法人の2種類に分類されている。
独立行政法人とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業で、国が自ら直接実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合、実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要なものを効率的、かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めにより設立された法人をいう。
特定独立行政法人とは、独立行政法人のうち、業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるものその他当該独立行政法人の業務の目的、業務の性質等を総合的に勘案して、役員及び職員に国家公務員の身分を与えることが必要と認められるものとして個別法で定めるものをいう。
以上の定義から、独立行政法人はその業務を適正かつ効率的に実施するように努めるとともに業務内容を公表すること等を通じて、組織及び運営の状況を国民に明らかにするよう勤めることとされた。また法律および個別法の運用については、業務運営における自主性は十分に配慮されなければならないとされた。
独立行政法人は、法人であり個別法により名称・目的・主たる事務所を定め、従たる事務所をおくことができるとされた。当然にその業務を確実に実施するため必要な資本金その他の財政的基礎を有しなければならない。政府は個別法の定めにより出資することができる。独立行政法人の名称は、独立行政法人以外の使用を禁じており、登記により第三者に対抗できるとされている。
私ども土地家屋調査士業務に関連して「登記・供託事務の外庁(独立行政法人)化」が、行政改革会議において議論がなされたことがあった。法務省は勿論のこと日調連・日司連ともに行政改革会議に外庁化に反対する意見書を提出した。結果は、登記・供託業務の公権力性や社会経済上果たしている役割などについて、理解が得られ具体的な審議対象から除外された。しかし、登記・供託業務の外庁化問題が、再燃してくる可能性も否定できないのでは・・・
平成12年11月6日民四2518民事局長通達にて独立行政法人の登記事務取扱いについて発信された。また、特殊法人登記令の一部が改正され、政令の名称も独立行政法人等登記令に改められた。
独立行政法人の登記は、主たる事務所の所在地を管轄する登記所の独立行政法人等登記簿になされる。登記事項は、名称、事務所、代表権を有する者の氏名・住所・及び資格、資本金等である。
3、公共嘱託登記土地家屋調査士協会業務における独立行政法人
このたびの土地家屋調査士法一部改正に際して、参議院での付帯決議として「公共嘱託登記制度については、その目的に照らし、行政部局の独立行政法人への移行等も踏まえ、当該制度の対象となる官公署等の範囲を随時見直すこと。」が決議されている。
現在、土地家屋調査士法一部改正に伴う改正政省令の公布がなされていないが、現行土地家屋調査士法施行令第四条の規定を改正し、独立行政法人を『公共の利益となる事業を行う者』の範囲に是非とも加えて欲しいものである。
独立行政法人設立登記にあったては、資本金の額を登記するため、当然に払い込みまたは給付があったことを証する書面を添付することになります。特に現物出資の場合、国有財産の現物出資について財務大臣が証明して書面、独立行政法人評価委員会の評価証明書等を添付することになります。財務大臣の証明書にはそれぞれ現物出資の種類に応じて、数量・見積価額を記載するので、土地・建物の場合には現地測量、その結果を登記簿の記載に反映させる変更登記がなされる。まさしく嘱託登記業務にほかなりません。今後、独立法人化に移行するものとして造弊事業、印刷事業、国立病院、療養所等が示されている。移行過程において生じる表示登記業務に関しては、調査士協会として受託処理することになります。
昭和60年6月28日土地家屋調査士法の改正法が法律第86号にて交付、同年7月18日に施行され、公共嘱託登記土地家屋調査士協会が誕生し、まもなく創立20周年を迎えることになる。その発展は、前身である公共嘱託登記委員会が昭和47年に組成されてからの13年余の歳月を含め、嘱託登記事件受託組織の充実、受託契約についての隘路等種々問題解決に、担当役員が尽力なされた結果であります。
土地家屋調査士法の一部改正により土地家屋調査士法人という新しい仕組みが制度の中に取り込まれることになった。個人会員と法人会員というこれまでにない組織機構となったが、共に調査士会の会員の身分を有することが条件とされており、調査士制度の充実強化に努めることを要請されることに差異はありません。また、それぞれ時代的要請の下に目的があって作られた組織で、その特質を生かし依頼者から委任を受けた業務の完遂を図ることが調査士制度を国家、国民にとって重要な制度として認知されるものと信じております。
参考文献 独立法人とは何か PHP研究所
民事月報 2001年1月