協会の案内協会の情報公開表示登記Q&A登記基準点成果検索公嘱NEWSの紹介 協会の支所管轄関係団体リンク集 社員専用

改正不動産登記法について

業務部長 小 松 陽 一

  1. e-Japan戦略と不動産登記法の改正
     平成6年12月25日に閣議決定された「行政情報化推進基本計画」により行政手続に関する申請手続を電子化して行うこととなり、国の行政機関を対象とし、平成7年度を初年度とする5か年を計画期間とすることとなった。いわゆる「紙」による情報の処理から通信ネットワークを駆使し、電子化された情報の処理への移行を実現することとされた。
     その後、平成12年11月29日高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(「IT基本法」)成立などを経て、H13.1.6内閣に設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)により平成13年1月22日e-Japan戦略が決定された。「我が国は、すべての国民が情報通信技術(IT)を積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向け、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す。」とし、2003年(平成15年)までに、行政(国・地方公共団体)内部の電子化、官民接点のオンライン化、行政情報のインターネット公開・利用促進、地方公共団体の取組み支援等を推進し、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、幅広い国民・事業者のIT化を促し、電子政府の実現を図るというものであった。
    この電子政府構想(e-Japan構想)の実現に伴い、不動産登記においてもオンライン申請の対応が求められ、抜本的な改正の検討がなされ、平成17年3月7日施行されるに至ったものです。

  2. オンライン申請の今後の動向について
     平成17年2月24日にIT戦略本部が決定した「IT政策パッケージ-2005-世界最先端のIT国家の実現に向けて-」の中では、「電子政府の推進を図るために、特に、国民及び企業に身近な手続である登記については2005年(平成17年)8月末までに、国税については2005年(平成17年)度末までに、手続ごとに添付書類のオンライン化、省略及び撤廃について検討し対応方針を定める。添付書類をオンライン化するにあたって、特に法令改正を伴わない添付書類については、2005年(平成17年)末までにオンライン化を可能とするための所要の措置を講ずる。」こととしています。
     また、24時間365日ノンストップサービスへ向けた取組を行い、申請者の利便性を高めるため、登記、国税及び供託については、システムの安定的な稼動に留意しつつ、その運用状況、利用者ニーズ及びその運用コストを十分に踏まえ、24時間365日受け付けるノンストップサービス化の推進を図る方策について検討を行い、2005年(平成17年)中に結論を得ることとされている。  そして、商業・法人登記のオンライン申請については、需要の多い登記所を中心にシステム導入を行い、2005年(平成17年)度末までに申請件数にして約60%以上をカバーする登記所において開始する。不動産登記のオンライン申請についても、同様に需要の多い登記所を中心に順次導入を図ることとし、商業・法人登記及び不動産登記の双方について、円滑なシステムの移行に努めるとともに、2008年(平成20年)度の出来るだけ早期に、全国の登記所のオンライン化を実現することとされ、不動産登記については、オンライン化に伴い、新たに登記申請における本人確認手段として導入される登記識別情報の有効性確認請求システムについて、利便性の向上を図るため、複数の登記識別情報の有効性確認の一括請求を可能にするためのシステム改修を2005年(平成17年)度末までに実施することとされています。

  3. 改正不動産登記法と業務部の対応
     平成16年6月11日に改正不動産登記法(法律第123号)が可決成立し、平成16年6月18日に公布された。内閣は、不動産登記法の施行期日を定める政令(政令第378号)により施行期日は平成17年3月7日と制定した。登記業務も年度末の超多忙な時期に改正不動産登記法の施行となったわけであるが、施行日がなぜ4月1日ではなく3月7日施行とされたのか、その理由はいまだに分らないままである。
     施行日を間近に控えた平成17年2月に入っても登記規則は(案)のままで、登記手続準則に至っては全く情報がない。2月の中旬頃から、徐々に社員や発注関係官公署からの問合せが事務局に寄せられ始めたが、出鱈目なことも答えられず、どうなっているのだろうと気は焦るばかりだった。社員には気休め程度の情報だったが、3月2日に公嘱協会HPの社員専用ページに、それまでに収集した不動産登記法、不動産登記令のほか、日調連作成「改正不動産登記法の概要と申請手続(1)、(2)」や民事局作成「改正不動産登記法Q&A」などの掲載を始めた。丁度その日の夕方になってやっと「不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日法務省民二第456号民事局長通達により改正)」の全文を入手し掲載することができた。2月18日に公布された「不動産登記規則」も2日の夜遅くに入手したが、社員専用ページに掲載できたのは翌日の3月3日だった。
     その後も土地家屋調査士会や日調連からの情報を速やかに掲載するよう心掛け、3月22日までに6回の更新を重ね、改正不動産登記法に関連する情報について、全部で19項目の資料を社員専用ページに掲載した。
     また、一般のHP訪問者向けにも基本法令である「不動産登記法」、「不動産登記令」、「不動産登記規則」、「不動産登記事務取扱手続準則」の閲覧やダウンロードが出来るようにPDFファイルで掲載したので、まだ閲覧していない方は是非ご利用頂きたいと思います。

  4. 改正不動産登記法と表示に関する登記の変更点
     平成17年3月7日に施行された改正不動産登記法はインターネットを利用したオンライン申請を前提としたものです。大きな変更点は、
    ア)登記原因証書及び申請書副本の廃止と登記原因証明情報の必要的提供の新設
    イ)登記済証(権利証)制度の廃止と登記識別情報の導入
    ウ)保証書の廃止と事前通知制度及び資格者による本人確認情報制度

    などがあげられます。
    また、法改正に伴う表示に関する登記での大きな変更点は、
    ア)分筆の登記では、分筆後の土地のすべてについて地積の求積方法、筆界点間の距離及び筆界点の座標値を明らかにすること。(規則第77条、準則第72条)
    イ)座標値は、基本三角点等に基づく測量の成果に基づく筆界点の座標値(近傍に基本三角点等が存しない場合その他の基本三角点等に基づく測量ができない特別の事情がある場合にあっては、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値)を記載すること。(規則第77条第1項7号)

    などがあげられます。

  5. 改正不動産登記法特別対策委員会と改正不動産登記法Q&Aの作成経過
     平成17年3月7日の施行日を間近に控えた2月に入り、社員や発注関係官公署からの問合せが事務局に寄せられ始め、3月11日の理事会において「改正不動産登記法特別対策委員会」を立ち上げることが承認された。3月15日に第1回の委員会を開催し、4月中旬を目処に「表示に関する登記を中心としたQ&A」を作成することとなった。この委員会は、本協会から小松陽一、小澤正德、斎藤良一の3名、仙台支所から遠藤実、小川正志の2名、合計5名の委員で組成した。
     平成17年3月17日にアンケート用紙を作成し、各社員の疑問点等の調査と取りまとめを行い、それに対する回答内容の検討を行った。時間的な余裕がないこともあり細部の意見調整などは電子メールをフル活用し、極力委員会の開催回数削減を図り4月11日の第4回委員会で最終確認を行い、小野理事長へ報告して委員会の解散となった。
     回答の取りまとめに当たっては、上記の各委員は勿論のこと、仙台法務局不動産登記部門の狩野要祐総括表示登記専門官には、ご多忙にも拘らず多大なるご助言とご指導を頂戴したので、この場を借りて厚く御礼を申し上げる次第です。

  6. 嘱託登記での主な留意点
     「改正不動産登記法特別対策委員会」が編集したQ&Aの中でも特に重要と思われる点について若干の補足説明をします。
    ア)登記原因証明情報と登記承諾書
    登記原因証明情報と登記承諾書(Q&A25~Q&A27参照)については、本来別々のものであるが、仙台法務局との協議により、Q&AのP14~15に掲載したような記載例に準じて作成したものについては、「登記原因証明情報兼登記承諾書」として便宜一用紙で作成しても受理されることとなった。(登記原因証明情報及び登記承諾書は、最終的に権利の登記に関する添付書類となるので、担当の司法書士に確認願いたい。)
    イ)分筆登記と地積更正登記
    分筆の登記では、分筆後の土地のすべてについて地積の求積方法、筆界点間の距離及び筆界点の座標値を明らかにすることなった。
    準則72条第2項の「特別な事情がある場合」については、Q&A33~34に掲載したとおりであるが、Q&A37のような広大ではないが僅かな土地の一部を分筆するような事例(狭隘道路の分筆など)については、分筆後の土地のすべてについて地積の求積が必要であり、特別な事情がある場合には該当しないということである。「特別な事情がある場合」の解釈としては、「広大な土地」であることと「分筆する土地の一方がわずか」であることを切り離して取扱うことは出来ないとのことである。
    準則72条第2項の「特別な事情がある場合」に該当するものであっても、日本土地家屋調査士会連合会が例示(Q&A34参照)した、
    (2)地図(法第14条第1項)が備え付けられている場合であって、分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であるとき。
    (3)座標値が記録されている地積測量図など既存の資料により、分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であるとき。
    (4)道路買収などの公共事業に基づく登記の嘱託が大量一括にされ、かつ、分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であるとき。

    の解釈については、何れも「分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であるとき。」を前提として、「分筆後の土地のうちの1筆について明らかにすることを要しない」こととしており、地積の差が誤差の限度内であるかどうかは土地の全体を測量しなければ判断できないのであるから、当然に分筆前の土地全体の測量をして判断することとなり、その判断をするに至った「地積」については実地調査書に記載を要するとのことである。(仙台法務局との打合せによる回答) 誤差の限度を超えていれば当然に地積更正登記を行う必要があるものと考えます。従って、
    (1)分筆前の土地が広大であり、分筆後の土地の一方が僅かであるとき。
    だけが、地積の差が誤差の限度内にあるかどうかに拘らず登記簿面積から差引計算での登記が認められることになるものと考えます。
    代位による地積更正登記ができるのかという質問が何件か寄せられていたが、この件についてはQ&A32に記載のとおり、昭和55年の通達により従前から代位による地積更正登記ができるものとされているところである。
    ウ)地積測量図の作成と基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量
    前述のとおり、分筆の登記では、分筆後の土地のすべてについて地積の求積方法、筆界点間の距離及び筆界点の座標値を明らかにすることなったが、更に、Q&A39に記載のとおり、地積測量図の作成にあたっては、原則として、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量が求められています。
     当協会ではGPS測量機を導入し、全県内8支所に電子基準点を与点とした登記のための「登記基準点」を配点すべく準備中です。但し、この「登記基準点」設置は、「国土交通省公共測量作業規程」に準拠した作業をすることとしておりますが、測量法との関係上、公共測量には該当せず国土地理院の認証を受けることが出来ないので、法務局の取扱いとしては「基本三角点等に基づく測量」に準じた任意座標としての取扱いとなるようです。
     しかし、日常の業務では、近傍に三角点や基準点のあることのほうが珍しく、ほとんどの場合国土調査の図根点さえ亡失しているのが現実です。 当協会としては、整合性のある地積測量図の作成を目指し、特段の支障がない限り、社員の土地家屋調査士が測量して作成する地積測量図はこの「登記基準点」を利用して作成できるよう、GPSプロジェクトチームを立ち上げて研修活動を開始しました。一日も早い実用化に向け「登記基準点」設置作業については社員各位の積極的なご協力をお願いします。
    「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量」が出来ないような特別の事情がある場合に限り近傍の恒久的地物に基づく測量をすることになりますが、この「近傍の恒久的地物」については、近傍に鉄塔などの構造物があればよいのですが、そのようなものが何もないところでは、従来の「引照点測量」と同様にコンクリート杭などを根固めした「引照点」を設置することも一つの方法と考えます。(「引照点」にはコンクリート杭などを根固めした「土地の境界標識」も含まれるものと考えます。)

  7. 電子政府と改正不動産登記法についての個人的な雑感
     この度の改正法では、「登記済証(権利証)がなくなる」ことや「全筆求積と基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量」が最大の改正点だと思います。 法改正によりインターネットによるオンライン申請もできる時代となったが、一方では、不動産の所有者の多くが高齢者だという現実があります。パソコンとはほとんど無縁な生活をしている多くの国民が、オンライン申請を出来るわけはなく、書面による申請は並存するものの、実質的には原則であるはずの「本人申請」が不可能に近いくらい困難な時代になったと思う。
     パソコンも日進月歩で改良が繰り返され、現在のプログラム言語或いはデータやファイル形式が永遠不変なものでは決してない。やり方はあるのだろうがパソコンに疎い私には、少し前のNEC-PC98時代のMS-DOSデータは、現在のWindowsでは読み込めないし、そのまま活用することは出来ない。僅か数年前に買ったWindows98のパソコンは既に使い物にならず未処分廃棄物となっている。ウィルスや情報漏洩、成りすまし申請などの問題もあるが、今後発生するであろう莫大な設備切替えの費用問題など、果たして将来に亘って国民の利便性に繋がるのだろうか。
     また、権利証がなくなり、英数字による「登記識別情報」が新設されたが、この「登記識別情報」は「原本性・唯一性がなく、物理的な保管が困難で、紛失・忘失の可能性が高く、かつ、コピーや不正使用も容易である。したがって、「登記識別情報」は、本人性及び登記申請資格・申請意思を確認するための機能の面においては、登記済証に比べはるかに劣っているものと言わざるを得ない。」(群馬司法書士会「電子情報処理組織を使用する方法による申請の導入等に伴う不動産登記法の改正に関する担当者骨子案及び同補足説明」に対する意見 http://www.sunfield.ne.jp/~shihou/pubcome/pubcome.htm より引用)との意見もあり、後段については「本人確認情報」などで補えるとしても、前段の原本性・唯一性がなく物理的な保管の困難性などについては個人的には同感である。
     一方、我々土地家屋調査士業務に関わる「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点測量」についても、日常の登記業務に対応できるほど基準点の整備がなされていない状況下での改正であり、土地家屋調査士が新たに基準点を設置するにしても「測量法」との整合性が全く図られていないままでの法改正のように思える。「測量法」及び「公共測量作業規程」は国若しくは公共団体が費用の全部若しくは一部を負担し、若しくは補助して実施する「基本測量及び公共測量」のための法規定であり、登記のためのものではない。
     全国のDID地区を対象とした地籍調査の整備を目的とする「都市再生街区基本調査」は昨年からやっと始まったばかりである。改正不動産登記法の目的とするところは理解できるのだが、果たして充分な基準点の整備がないままに民間の登記にも適用し、何らの助成制度もなく国民に過重な経済的負担をさせることが妥当なのかどうか、全筆求積問題も含め疑問が残る。
     最後に、≪デジタル・デバイドの完全解消に向けて≫を下記に引用して筆を置きます。
    デジタル・デバイドの完全解消に向けて
     世界一安く早いと言われるブロードバンド。ネット利用者は約8000万人で人口普及率は、60%を突破していると言われているものの、依然デジタル・ディバイドは存在しており、年齢や年収・性別による格差ではなく、ブロードバンドのインフラがまだ整備されていないエリアがあることが報じられている。「ブロードバンド空白地域をゼロに」と総務省が意見募集を開始した、という記事が2004年12月18日付のnikkeibpで掲載されていた。(詳しくはITPro:日経コミュニケーション)
     この記事によれば、総務省は12月17日、ブロードバンドが使えないデジタル・デバイド問題の解消を目指す「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」の中間報告案を公開し意見募集を開始した、とある。
     国3123市町村のうちFTTH、ADSL、CATVいずれかのブロードバンド接続サービスが利用できる自治体は88.9%にあたる2774で、差し引き349市町村、11.1%は未だにデジタル・デバイド状態ということになる。また市町村の全世帯がブロードバンドに加入可能な市町村のサービス別状況は、ADSLが約51.3%、CATVインターネットで約8.1%、FTTHにおいては約4.6%となっており、FTTHはまだまだという状況である。
    市場通信(ITマーケティング)HP http://www.shijo24.com/000573.php より抜粋