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司法書士協会だより ADR基本法

社団法人宮城県公共嘱託登記司法書士協会
仙台支部長  京   昭 弘

 今年も、BEAUJOLAIS(ボジョレー) NOUVEAU(ヌーボー)の時期となった。すでに新酒の味を嗜まれた方も多いことだろう。バブル経済と相まってワインを広く一般に知らしめた功績は大である。解禁日より遡ること10日余り、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR基本法)が衆議院で可決され、皆さんがこのNEWSを手にする頃は法案が成立していることと思う。司法制度改革推進本部の解散が決まり、司法制度改革審議会の意見書による最後の法案となることだろう。文字通り、紛争解決のために裁判を利用する必要のない、言い換えれば、弁護士に依頼しなくてもトラブル処理ができることになる。さらに判決という一義的な判断をする必要は無く、慣習や条理に適った、あるいは実情に応じた柔軟な解決を図ることができる。裁判所の高い敷居を跨がなくてよい、専門家が向こうから来てくれる、となれば八方塞だった問題解決に光が差し込むだろう。また、紛争の相談を受けていた立場としては、提示した解決案にADRというお墨付きが与えられる。そして、法曹隣接職能に期待するところが大きいと言われているようなので、新たなビジネスチャンスに鼻息も荒くなる。と、まあ、いいこと尽くめの法案のようだが、別な位置から見れば、昨今大流行の「自己責任」の一形態でもある。
 『自らの手で問題を処理する能力を身に付けろ、さもなければ相手の言いなりさ』。紛争当事者の自主性が重要であるから、当事者は、このように解決したいというビジョンを持ってないと、意図した解決策と程遠い結果に終り、かなりの不利益を被るおそれがある。当事者本人には、今までの裁判所や弁護士からの通知・連絡に加えて、これからはありとあらゆるところから「本件につきまして来る日時にお伺いします」旨の案内が届く。そうでなくてもオレオレ詐欺、架空請求、不当請求が氾濫している社会なのにADRの正当な通知、ひいてはADRそのものが受け入れられるようになるには、言うまでもなく担い手の資質にかかっている。
 ワインの味に戻ろう。誰にでも差しさわりの無い優しいテイストではなかろうか。逆に二癖も三癖もあったらマニアックな者にしか好まれないであろう。裁判、弁護士と並び称される予定のADR、市民に選択肢の幅を広げさせたいのなら、裁判を毛嫌いし、他の方法を望むのなら、利用者も手続実施者もそれ相応の知識、能力を会得することが絶対不可欠である。