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若林区上飯田地区法第17条地図作成に携わって

仙台支所 高 橋   眞

不動産登記制度は、不動産の現況を明確にし、権利変動を登記簿に記載して公示する制度である。
しかし登記簿によって、地番地目地積が明らかにされても、現地のどの土地を表し、どういう形状であるかということは登記簿では明らかにできない。

上飯田四丁目地区に掲示した法17条地図看板
上飯田四丁目地区に掲示した法17条地図看板
不動産登記法第17条は、登記所に地図及び建物所在図を備えることに昭和35年法改正したが、一部の地域を除いて地図は備えられていない。そこで登記所に備える地図のモデル作業として法務省は、昭和44年(1969年)に法第17条に基づく地図作成作業に着手したのである。実は、明治19年(1886年)8月13日法律第1号をもって制定公布された、旧登記法以来83年目にして登記所に地図が備えられることになったのである。
一番最初のモデル作業は仙台法務局管内の仙台市南小泉字遠見塚地域となり、宮城県土地家屋調査士会は作業に協力するとの話もあったが、当時組織と経済力など諸問題もあって数人の有志が集い一部の役員が測量会社を立ち上げて地図作成した経緯がある。
 この後は、毎年1ヶ所全国の法務局で地図作成のモデル作業をしているが、平成11年に再度仙台法務局管内の仙台市若林区上飯田三丁目四丁目約0.44ヘクタール2003筆の土地を31年ぶりに2度目のモデル地域として選ばれた。
4級基準点設置作業中のところ
4級基準点設置作業中のところ
仙台法務局は、平成11年4月地図作製の実施機関として、宮城県公共嘱託登記土地家屋調査士協会に委託発注した。受託した協会は、直ちに班編成して協会社員に振り分けた。既に、法務局は、準備作業として、前年平成10年9月から仙台市を通じて各官公署及び区役所に地図作製の事前説明をし、翌年2月には各町内会を通じ住民に説明会を催した。
作業は先ず登記簿公図調査などの資料整理から始まり現地調査、基準点測量、筆界確認測量、縦覧原図作成、縦覧立会い、地図の作製、成果検定、職権登記など23項目もあり翌年3月履行期限として始まった。
作業について時系列的にみると、作業甲区をAからJまで10工区に分け4月20日10人の社員に振り分けた。最初は、調査図素図と調査図素図一覧図の作製作業を、連休を挟み2週間の工期として委託し5月20日に法務局へ納品した。
5月21日資料整理の一部として若林区役所に出向し各々担当する各地域の境界確定図のコピー作業に従事した。この間法務局では土地調査書作成や地権者985人への境界立会い通知書作成など境界確認測量の準備作業を進めた。 
法務局は、既に基準点設置作業を発注し7月には槻ね3級基準点7点、節点4点、4級基準点360点、標識は直径5cm金属標の設置が完了すると言う。
6月に入り、道水路敷と公共物の筆界確認について区役所管理課に境界立会を求めるが確定図の通り公共物境界を復元し、復元できない場所や不明な点は別途図示するように指導があった。
埋設工事の4級基準点
埋設工事の4級基準点
次に「確定協議書を基に現地調査し忘失点や復元できない所を図示して区管理課に提示し立会って貰うよう」にと法務局から指導を受けた。?
 現場に行くと地権者からは「7月の境界立会い通知は来たが6月官民立会い通知はなくなぜ今測るのか」と苦情を寄せられ、公共物の境界不明部分を測量調査している旨事情説明し調査に協力を求めた。反省として法務局は確定協議書通りに境界復元を求めるなら事前に隣接所有者にも公共物復元測量立入りする旨の通知を出していただいた方がよかったと思われる。
  法務局では区役所管理課と再協議したようだが、公共物と言っても仙台市には水道局、下水道局、衛生局、開発局、建設局、経済局、ガス局と各々土地管理しており各部局の日程調整だけでも、7月1日から始める筆界立会いには到底間に合わず、その後に区管理課の担当者は疾病入院するアクシデントも加わり、公共物の境界は確認しないまま民有地の筆界確認作業に入ることになった。
 法務局や区役所管理課は数十年も前の実測図に基づいてその境界を復元するよう求めたが、当然ながら原因として現実の境界とは相違することが多かった。また、ここは昭和53年6月宮城県沖地震で地割れが生じ家屋が倒壊した被災地で、その後の土木復旧工事により境界は著しく変動しており確定図に図示された境界は既に忘失していているものも多くあった。
 この地域は動く土地即ち不動産ではなく「動産」と思わなければならなかった。たとえ確定協議とおり境界を復元して見ても、20年以上善意無過失に隣人同士が納得し構築したブロック塀を取壊し新しく境界を創設しても当事者は納得しない場合もある。?
 また確定協議書の境界を主張強行すれば紛争を呼び起こし混乱を招くだけだと思い地権者には現況に近い線で境界を確認し了解を戴く方向で作業を進めた。  7月2日から8月10日の予定で民有地の筆界確認作業に入った。昨年は異常なほど暑かった。中には炎天下猛暑での立会いに熱中する余り作業中の舗装路の反射熟も加わり体力消耗著しく熱射病で倒れ寝込んだ社員もいた。筆界確認は直ぐ判るものから、隣人双方の主張を納得いくまで聴き取り1mも掘削して境界を発見したり、コンクリートを破砕して境界を現しても双方納得せず確認作業は難作業を極めた。
 例えばこんな話があった。
 7月5日猛暑の中、所有者が夫婦で境界立会いに現れ、境界杭がないのでブロック塀の基礎角地下0.5mまでを掘削して見た。しかし境界は現れずおかしいと言い張りコンクリートの境界杭は、隣人がブロック塀構築の際に抜き取ったと罵り喧騒となり、立会いの隣人婦人は泣き出し現場は嫌悪な状況になったが、双方をなだめ、とりあえず地積測量図と確定協議図から境界を復元し、ブロック塀基礎角の所に仮杭を設置した。
民有地と道路敷との境界杭を探しているところ
民有地と道路敷との境界杭を探しているところ
 それでも納得せず法務局が示した土地調査書の所有者確認欄の署名押印を拒否した。その後法務局が再度立会いを求めたところ、7月26日現地に行くとの事なので担当調査士は当日午後7時10分まで約3時間待ったものの本人が現れなかった。
 8月17日所有者は現地事務所に来訪し境界杭の無くなった事情及び土地調査書に署名押印しなかった事などを話しにきたので、将来筆界未定地になると土地の変動を生じた場合直ぐ登記はできないし、費用も大変掛かると法第17条地図の重要性について説明した。
 所有者はブロック塀角の仮杭ではなく新しくコンクリート境界杭を埋設してくれるなら境界確認の署名押印に応じると話した。
 8月26日現地立会いのうえ埋設することを約束したが、当日本人は現れず仕方なく隣人の立会いを得て埋設準備をしたところ、ブロック塀の基礎角地下0.65mの所からコンクリート境界杭が現れた。しかし今度は、境界を抜き取ったと怒鳴られ疑われた隣人は納得せず、怒り心頭に達したが一応その場はなだめて現場を保存し所有者が来るのを待った。
 9月7日所有者の依頼を受け地下にあるコン杭の上に新たにコンクリート杭を継ぎ足し、隣人の了承を貰い双方の境界とする事にした。
  9月23日双方に気まずい感情は残ったが大きな紛争にならず80日間に亘る境界協議は、所有者から土地調査書に署名押印を貰うことにより確認作業は終了した。
 このように、8月には筆界確認を終了した地域から漸次1筆地測量に入った。測量器材はトータルステーションGTSを使用、測量方法は多角、放射方式TS観測方法、面積測定はコンピュータによる座標法によった。しかし公共物の境界立会いのない所は暫定測量しておき、後日再測量することにして作業を始めた。作業中境界の苦情や叱責もあり大変だったが、地権者から冷たい飲料水を差し入れられ慰労を受けたのには感激し心が安らぐこともあった。
民有地と道路敷との境界を埋設しているところ
民有地と道路敷との境界を埋設しているところ
9月には6月に立会しなかった公共物境界を、区管理課はようやく立会いしてくれることになり、地域住民には7月の境界立会いに引き続き炎天下の中、再度協力をいただくことになった。
 各班の筆界確認測量作業は引き続いて画地調整、補助基準点測量、筆界点間測量など順調に進んだ。
 10月には問題箇所の確認や再々の境界立会いや測量をして一筆地の筆界確認作業を続け、更に官民境界の問題箇所の立会い協議を進めた。この間各班は辺長図作製、筆界点番号図作製、地積等調査一覧表の作成作業に精力を傾けた。しかし残念なことに一部に係争地が発生し当事者と区管理課は3ケ月に亘り話し合いを続けたが隣接土塀に落書きなどの問題が発生し、最後まで互議がなく筆界は整わなく、唯一の筆界未定地となった
  11月に入り各班は細部測量の成果表、観測手薄、計算簿、基準点綱図、地積等調査一覧表、縦覧原図を作成して11月20日まで法務局へ納品した。
 
六郷市民センターにおける測量図面の縦覧説明会
六郷市民センターにおける測量図面の縦覧説明会
12月には地権者に対し測量図面の縦覧説明会を開催した。地元近くの六郷市民センターにおいて12月11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)、の4日間行った。
 いずれも午前10時から午後4時まで地権者216名が縦覧に訪れた。これは地権者の22%に当たり通常より10%程度多く、関心の高さが伺えた。縦覧の結果2、3の地権者から面積不足のため異議申立てがあり現地で立会い再測のうえ協議することで理解を得た。
  翌平成12年1月からは製図作業に入り、面積不足地の再測を行った。また2月にかけて法務局は、成果品に基づき職権登記を始めた。筆数は2,380筆、内訳は、分筆登記90筆、合筆登記170筆、地目変更登記220筆、地積更正登記1,780筆、建物所在変更登記120筆であった。
 2月から3月にかけ作業は終わりに近づいて来たので法務局は整理作業に入った。協会への委託金も支払われ、地図作製作業は全部完了した。

現場事務所内風景

法第17条地図作製作業現地事務所を訪れた法務局職員と作業従事の協会社員(筆者は左から4人目)